散歩道<2035>
経済気象台(238)・企業の社会的使命
ノキア・モトローラ、サムスン。米調査会社がまとめた世界市場における06年の携帯電話の販売シェアの上位3社だ。残念ながら、日本企業の名前はない。次世代通信機器という成長分野で、我が国の基幹である製造業が他国の後塵を拝してしまうとは、10年前までは考えられなかったことである。研究開発と新規設備の遅れが原因の一つと考えられる。今世紀に入ってから、金融を中心としたアメリカ型資本主義の考え方が、わが国の経済界に浸透し始めてきた。企業は業績のみを追求し、業績が悪ければ簡単にリストラに走る。自社の株価とされ、時価総額の追求のみが社業の目的となってしまった。企業の持つ社会的な意味合いなど、ここでは評価の対象にならない。地域社会への貢献,国際社会への貢献、未来社会への貢献、従業員への幸せへの貢献・・・・。いずれも決算書に表れず、株価にも反映されないが、これこそが企業に課せられた最大の使命であり、経営者が決して忘れてはいけない命題だと思う。サービス業、流通業などでは、一部の経営幹部が、自社株の上場によって巨額の富を持つ富欲層となった。しかし、その職場で働く従業員の多くは、時給800円のアルバイトや臨時雇用の社員、いわゆるワーキングプア層である。一方、製造業の従業員は、その殆どが中流社会を形成する中間所得層であるとされる。アメリカは情報社会という名の下に、80年代に脱工業化を進め、製造業を捨てた。その結果、大きな所得格差を持つ格差社会の出現を許したのだ。我が国で製造業が衰退することは、とりかえしのつかない格差社会を作り出すことになりかねない。いま一度、冷静に製造業の持つ社会的な意味と、企業の持つ社会的使命を考えてみるべきときではなかろうか。
'07.9.29.朝日新聞
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