散歩道<1988>

                      安倍政権崩壊を読む(2)・保守理念放棄した自民党         (1)〜(2)続く
                               人気落ちれば「使い捨て」対象

 「小泉政治」清算できず

 安倍氏の不幸は、彼の政治的手法も理念も小泉氏のものとは大きく異なるにもかかわらず、小泉氏の後見によって首相になったことにある。そのために小泉政治を清算することができなかった。その結果、安倍政権の政策は、一方で、憲法や教育という戦後レジームの見直しという保守的政策を掲げ、他方で改革の続行、成長の追求を掲げるという支離滅裂なものとなる。グローバルな市場競争の強化は地方の疲弊と大量のフリーターを生み出し、「美しい国」とは矛盾する。日米同盟の強化は日本の自立心を失わせる。こうした矛盾に対して安倍氏自身が十分に自覚的であったとは思われない。安倍政権の行き詰まりが、憲法や教育という安倍氏の本来の政治的使命を争点としたものであれば、それはそれでよい。しかし、「大衆的人気主義」と「「改革主義」という小泉政治のもたらした政治風土(そしてそれこそが「戦後日本的なもの」のひとつの帰結にほかならない)によってこれらの争点がうやむやにされることは望ましくない。「保守」の理念が対決を要するのは、まさに上のふたつの主義なのである。自民党がこの政治風土に浸りきった時、自民党にはもはや「保守」の理念は存在しない。
 安倍氏の本当の敵は自民党自体であった。安倍氏は、それこそ「(保守の理念を失った)自民党をぶっこわす」べきであったが、それだけの力量はなかった。保守政党としての自民党は確かに小泉政治によってすでに壊れていたのである。小泉政治のもたらしたつけは大変大きいといわねばならない。

'07.9.15.朝日新聞京都大教授・佐伯 啓思氏