散歩道<1982>
経済気象台(230)・「仕組み」の経済学ー3
有事のリーダーシップ
市民にとって有事とは、天変地異*1、金融・経済危機、国防、破壊活動などである。これらの事態に対処すべきリーダーには「有事斬然」として、迅速で果敢な決断を下す資質が求められる。新潟県中越沖地震では、原発での火災や放射線漏れの事態に、不十分な情報開示や、トップの責任問題にも応えない電力会社に痺れを切らした市長が原発停止を発動した。有事の備えが必須で規制業種となっているが、実際には平時の能史がトップにつくことが多い。大手銀行の不良債権処理でも有事での決断力の欠如が露呈された。わが国の原発事業は虚構の「安全神話」に依存しているが、リスクが顕在化したとき、企業のトップは孤独な決断を下さなければならない。この国の十指に余る原発事業体はそのようなリーダーを擁しているだろうか。サブプライム問題に端を発した世界同時株安でも米国では金融政策トップが直ちに連携してタイムリーにメッセージを発し続けているのに対し、わが国では財務大臣や中央銀行から市場への対話は乏しい。株式市場などは証券カジノ程度にしか思っていないのだろうが、株価も円高もわが国経済の死活問題という危機感が感じられない。最悪のタイミングで不動産融資の総量規制を行い、バブル崩壊をもたらしたという失敗の教訓もない。政界でも、野党の党首は選挙戦を見据えて「常在戦場」とうそぶいていられるが、国家のCEOたる首相には「常在戦場」の非情さと実行力が求められる。身辺不始末の閣僚を擁護し、不祥事が相次ぐ社保庁に欺かれた首相はその未熟さとリーダーシップの欠如を見透かされ、自らを追い込んでしまったのだろう。有事に対処し得ないリーダーと見なせば、直ちに首をすげ替える仕組みも必要であるが、ここにも疑問が残る退任劇となった。
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