散歩道<1962>

                             経済気象台(220)・明るけりゃ月夜

 日銀が政治に負けて利上げを見送ったので国際金融市場にも失望感が広がったのだが、ウオール街の友人の話では、利上げを予想して間違ったファンドマネージャーがかなり居るらしい。「改革なくして成長なし」をスローガンにした小泉首相の後継者、安倍首相がこんどは「成長なくして改革なし」という姿勢なので、このあべこべに不信感も出ているようだ。どうやら日本経済の回復基調について、兜町を含め国際金融市場は買いかぶっている節が見える。リストラや派遣社員の採用など人件費削減を進めれば、ものが売れなくても、どんな企業でも当面の収益は増えてくる。だが、それは国民全体の暮らしぶりを押し上げることにはつながらない。史上最長の超いざなぎ景気といわれても実感がないのはこのためだ。しかし、目先の企業収益を物差しに株価をはやしている空気は世界共通で、2007年の先行きについても国際金融市場ではおしなべて明るい見通しが支配している。確かに中国、インド、ロシアなど新興経済パワーが台頭し、世界経済を活気づけている。しかし国同士、さらに一国内での貧富の格差は拡大している。ロシアや中東産油国の資源ナシヨナリズム、中国など新興国と先進国との資源獲得競争の激化など撹乱(かくらん)要因には事かかない。日、中、韓、東南アジア諸国保有のドルを借りまくる米国の膨大な財政赤字は増え続けるばかりで、ドル不安を醸成している歪(ゆが)みも一向に解消されない。1日の国連機構変動政府間パネル報告のような地球温暖化など環境汚染のツケも迫る。ソ蓮経済の崩壊と米ソ冷戦の終結で共産主義が正当性を失った後の世界経済は資本主義による自由経済モデルしか見当たらないが、それを「明るけりゃ月夜」と思う単純な楽観論では、随所に待ち構えている落とし穴を見失ってしまう。

'07.2.9.朝日新聞