散歩道<1961>
経済気象台(219)・形に似せて絵を画く
米レーガン政権時代にワシントン、ニューヨークに居たことがあるので「美しい国」や改憲、ミサイル防衛強化、防衛省昇格、企業減税重視のデフレ脱却など安倍首相の政策は、レーガン路線そっくりに見える。レーガン大統領は保守主義への回帰、核増強による力の外交を軸に据え、米国経済の再生と強いドルの再建を図った。その処方箋はレーガノミックスと俗称された供給重視政策だった。企業減税などモノを作る側を豊かにすれば、設備投資が増えて景気がよくなる、という考えだ。所得税減税などでモノを買う消費者を豊かにすれば、需要が増えて経済が拡大するという需要重視政策の逆である。しかし、減税が投資を促進するというレーガノミックスは神話にすぎなかった。企業は減税で浮いた資金を設備投資にまわさず、企業買収や金融投資などマネーゲームにつぎ込み、そこに「ホリエモン」的な若い昇進志向の強いヤッピーたちが群がり、コンピュータを駆使して「新人類相場」に踊り狂奔(きょうほん)した。その挙げ句、87年10月19日、ニューヨーク株価は大暴落。さらに世界的な株価の連鎖暴落を誘発して国際金融市場をパニックに陥れた。悪名高いブラックマンデーだ。また設備更新を怠った米企業の国際競争力は落ち、貿易赤字が増大、減税で財政赤字もふくらみ、この時代、米国はついに債権国から債務国に転落した。日本経済の主役はGDPの6割を占める消費だ。だから、レーガノミックスをもじった企業に手厚いアベノミックスも「形に似せて絵を画く」まねだけでは危ない。しかも、参院選後に消費税引き上げという。消費の冷え込みが確実視されるのに、企業は設備投資をいそぐだろうか。「新人類投資家とかけて何と解く」。答えは「明日はレストランのウエーター」。ブラックマンデー当時、ウオール街ではやった小話だ。
'07.1.17.朝日新聞