散歩道<1956>

                       世相(28)・やけっぱちのバイタリティカストリ文化」昭和21年陽の当たらない「窓際族」昭和53年

1、やけっぱちのバイタリティ「カストリ文化」(昭和21年・'46)
 カストリ(粕取)は、本来酒粕を蒸留して造る良質の焼酎である。だが、敗戦後の闇市に出回ったカストリはそんな上等なものではなかった。ドブロクを蒸留して造った粗悪な密造酒で、コップを近づけるだけで異臭がツーンと鼻をついた。そんな粗悪品でも、メチール入りのバクダン焼酎に比べるとずっと安全だったから、人々は一杯のカストリで憂さをはらした。これを密造するところがカストリ部落、あおるように飲んで怪気炎をあげるのがカストリゲンチャ*1、街に氾濫するケバケバしい表紙の薄っぺらな雑誌がカストリ雑誌だった。それらは、闇市やパンパンとともに戦後の混乱期を象徴する存在だった。明日の暮らしは分からない。やけっぱちで刹那的な時代傾向は、カストリ文化時代と呼ぶにふさわしかった。それはまた同時に、日本人の底知れぬバイタリティーを感じさせてくれる世相でもあった。鷹橋信夫氏

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陽の当たらない「窓際族」(昭和53年・'78)

2、高度成長時代に大量に雇った人員が不況下でだぶつき、昭和53年には希望退職者、配置転換、出向など、厳しい人減らしの嵐がサラリーマンを襲った・「企業が内部で抱える潜在失業者は2百数十万人といわれ、人員過剰感は産業界、取りわけ製造業で強い。それだけに景気が回復したからといって、雇用調整が下火になる保証はない」日経53.4.2.「景気はよくなるか」といった深刻さである。そんな中で、閑職の窓際の机に追いやられた人が”窓際族”だ。52.6.11の『北海道新聞』のコラムに「窓際おじさん」とつかわれたのがこの言葉のはしりとされているが、「窓際族」以下様々な派生語が生まれた。窓もない「壁際族」、いつ掘り出されるか分からない「ドア際族」、陽当たりの悪い「窓裏族」、屋根裏部屋の「アンネ族」、おいつめられた「水際族」「瀬戸際族」、その他「物置族」「デッキ族」「アラスカ族」と際限なかった。鷹橋信夫氏