散歩道<1953>
経済気象台(218)・構造改革、そのジレンマ
経済の活性化と財政の健全化、そのための不良債権処理、規制緩和、民営化、歳出入改革・・・・。国の基本を変えるほどの、いわゆる「構造改革」施策が次々に打たれた。だが、ここにきて事態は難しくなってきている。規制緩和は事業者間の価格競争を促す。それは当然コスト競争を激化させ、人件費の低減、賃金の抑制・引き下げに行き着く。だから消費は低迷する。それに加え公共投資を削減し、税負担を増やすから内需は回復しない。一方で製造業のコスト競争力は増すから輸出が拡大する。輸出で成長を担保する。そうなれば本来円高になるはずだが、物価下落を嫌う国は低金利のまま円安を維持する。業績のよい輸出企業も将来の円高が恐いから賃金を上げない。だから消費は回復しない。そうであれば低金利継続しかない。それが今日まで続いている。我が国のことだけならそれもよいだろう。直接の原因はともかく、今般の世界金融市場の混乱を大きくした一因はわが国の低金利と円安だ。異常な低金利が国際経済に与えていた歪はあまりにも大きかった。早晩アジアの実体経済に大きな影響を与えるだろう。この異常さの解消、わが国の低金利是正は国際社会にとっての喫緊の課題である。だが金利をあげれば当然円高となり我が国経済は物価下落のリスクを負う。デフレスパイダルに陥るかも知れない.そう考えるなら政府支出を増やすか減税で内需拡大を図りつつ金利を是正するしかないが、金利の上昇は膨大な債務を抱える国の負担を大きくする。その上更なる財政負担は耐え難い。いずれはすべて国民の負担となるのだから。あれこれと考えると、構造改革とはなんだったのか、政策の組み合わせ、タイミング、スピードはどうだったのか、とつい思ってしまう。構造改革を牽引してきた皆さんは今、どうお考えだろうか。
'07.8.30.朝日新聞