散歩道<1945>

                      臨床試験(1)・系統立てすべてに法規制を        (1)〜(2)続く

 臨床試験(医師が人を対象として行う医学研究)を実施するには、倫理審査委員会の承認と、文書による被験者のどういが最低必要条件である。
 だが、神戸市立医療センター中央市民病院で7月、同意書を得ずに乳がん患者48人に抗がん剤を使った臨床試験をしていたことが明らかになった。同意書の取得は試験の計画書に記されていたが、忙しさのため得ていなかったという。
 同様の問題が起きたのはこれが初めてではない。金沢大病院では98年、卵巣がん患者に無断で化学療法の臨床試験が行われ、患者の人格権が侵害されたとして遺族が提訴した。最高裁判決で、遺族側の主張を基本的に認めた二審判決が確定している。
 全例があるにもかかわらず、同様の事態が再び発生した。なぜだろうか。
 臨床試験には。医薬品などの承認申請のため主に企業主導で行われる「治験」と、主に承認済みの医薬品などを使った医師主導の「自主臨床試験」がある。治験は薬事法に厳格な規則があるため、今回のような事態が発生する可能性は低い。一方、自主臨床試験は、厚生労働省の「臨床研究に関する倫理指針」に従うべきだとされているが、法的拘束力はなく、事実上「無法状態」におかれている。神戸市立医療センターと金沢大の事例は、いずれも自主臨床試験にあたる。
 

'07.8.29.朝日新聞・九州大大学院教授(臨床薬理学)笹栗 俊之氏

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