散歩道<1946>
臨床試験(2)・系統立てすべてに法規制を (1)〜(2)続く
治験が法規制されている背景には、被験者のリスクもあるが、治験の質を確保しないと医薬品開発の国際競争に取り残されるという市場経済的な理由も大きい。しかし、被験者から見れば、実験に参加するという意味では、治験も自主臨床試験も何ら変わらない。リスクの大きい自主臨床試験も十分あり得る。
もう一つの問題は、臨床研究(人を対象とする医学研究)の倫理問題が持ち上がる度に、関係省庁が一時しのぎで指針を出し続けてきたため、整合性のない指針が乱立してしまった点である。文部科学省・厚労省の「疫学研究に関する倫理指針」、文科省・厚労省・経済産業省の「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」、文科省・厚労省の「遺伝子治療臨床研究に関する指針」などで、本来は先述の「臨床研究に関する指針」が全体を包括すべきなのだが、現状では他の指針に該当しない研究にしか適用されず、包括的指針となりえていない。
神戸市立医療センターでは、同意書を得ずにC型肝炎の疫学研究をしていたことも発覚した。これも規制が系統立てられていないことに問題の一因がある。
米国では「国家研究法」という法律で臨床研究全般を規制している。日本もそれにならい、臨床研究に関する基本法を設けた上で全省共通の規制を作り、臨床試験すべてに倫理審査と同意書の取得を義務づけるべきだ。
法規制などというと反発を招きそうだが、適切な規制は被験者にみならず研究者の安全を守ることができる。規制に応じた研究基盤が整えば、正確な試験結果を確実にもたらすことも期待できるだろう。
'07.8.29.朝日新聞・九州大大学院教授(臨床薬理学)笹栗 俊之氏
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