散歩道<1936>

                        経済気象台(213)・専門家は専門を語れ

 参議院選挙の終了後、識者のコメントがマスコミをにぎわしていたが、筆者はいつも不思議に思うのは、日本経団連を始め財界団体首脳が経済と直接関係のないテーマについて実に幅広くコメントを行っていることである。経団連について言うと、記者会見は毎月2回催され、選挙の結果、年金記録問題、ふるさと納税など、多義にわたる質問に答えている。又、何かことが起こる度に談話を発表している。この数ヶ月間に限定しても、国民投票法の成立、久間防衛大臣の辞任、参議院選挙の公示などに関する談話が発表されている。もちろん、これらのテーマについて経団連首脳が個人的に関心を持つことは十分あり得るし、職見も有るのかもしれない。しかし、政治にしても地方自治問題にしても専門的知識を必要とするものであり、中途半端にコメントできる代物ではない。米国にもビジネス・ラウンドテーブルといった大企業のトップが参加する団体はあるが、森羅万象にコメントしているわけではない。プレスリリースをみても、貿易問題、エネルギー問題といった、企業に直結した問題に限られている。その代わり、企業経営者が専門分野について中長期的名観点から講演を行うことも決して少なくない。日本の場合、雑多なテーマについてコメントするという奇妙な習慣は財界団体首脳だけでなく、政府首脳や官庁の次官、業界団体の会長も同様である。学者も自分の専門分野以外の政策について幅広く語っている。それではコメントを発する人たちは自分の専門分野に関して専門家らしい情報発信を行っているだろうか。日本の進路に影響するような重要なテーマでこそ専門家らしい情報発信、それも深みのある講演が期待される。今の日本はアマチュアの発言で充満している。不足しているのは専門家による専門家らしい情報発信である。

'07.8.22.朝日新聞