散歩道<1935>
経済気象台(212)・エミッションの経済ー4
ZEFからNEFへ
企業の温暖化対策については前回に触れたが、最近は産業廃棄排出よりも家庭排出の伸びが大きく、市民側の対策も必要といわれている。ゴミの分別、節電、省エネといった市民の日常生活での温暖化ガス削減努力は否定するものでもないし、週末のゴミ拾いなどは家庭団欒、地域交流といった効果もあろう。だが、1世帯あたりの年間排出量は約5.5dである。シカゴ気候取引所(CCX)で排出権を購入するコストは、現時点で3千円に過ぎないのである。仮に上限と考えられるトン当たり100jとしても、年間コストは日刊紙の購読料をやや上回る程度である。年間5.5トンの排出量を購入すれば、ゼロ・エミッション・ファミリー(ZEF)、5.5トンを超える排出権を購入すれば、ネガティブ・エミッション・ファミリー(NEF)となる。アル・ゴアの「不都合な真実」や地球環境の危機を叫ぶメディアの影響から、何となく後ろめたさを感じている日常生活も、NEFと宣言できれば快適なものになろう。排出権制度は国によって制度が異なり、互換性がないという識者の意見もあろうが、少なくとも企業については多かれ少なかれ多国籍化しており、連結の時代に日本の排出を海外でオフセット(相殺)するのは当然のことである。家計には削減目標もないので現時点では気休めに過ぎない。それでも、家計まで排出権を購入するようになれば、温暖化ガス市場の立ち上げを後押しすることになる。民間部門が積極的な行動をとれば、京都議定書以降、補助金バラまき以外に意味のある施策を講じてこなかった行政の貧困な環境対策の反省を迫ることが出来る。政治家の玩具、官僚の利権、企業のPR、市民の気休めではなく、それぞれが温暖化ガス問題を経済的に機能させることが今、求められている。
'07.8.25.朝日新聞
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