散歩道<1934>

                       経済気象台(211)・エミッションの経済ー3

全社環境運動
 筆者の関係する会社は社員5千人で、サービス産業に従事し、毎年数十億円の利益を計上している。昨今の流行を受け、全社環境運動を展開し、環境報告書も作成している。年間の温暖化ガス排出量はCO
2換算で1万d程度であり、これを年率数%削減してきた。京都議定書は国際政治としては多くの問題を残したが、構想としては優れたもので、温暖化ガスを削減する3種類の経済的な仕組みを提案している。その一つが欧米で実施されている排出権取引(エミッション・トレード)である。シカゴ気候取引所(CCX) の最近の相場ではCO2 1d当たり4j前後である。つまり、年間1万dのCO2を全滅させるのは
 人的、資本的に膨大なコストをかけても不可能であるが、CCXで排出権を買えば500万円に過ぎない。環境推進室などの維持費よりはよほど安上がりといえる。100年分を1括購入しても、収益的に十分対応可能な5億円のコストで今世紀の温暖化対策を講じることができる、と地球温暖化に中立的な「100年安心企業」として売り出せばPRコストとしても安いものだ。残念ながら、市場規模は4兆円程度に過ぎず、超長期の先物もない。これに代わるものとして、発展途上国で行うクリーン開発メカニズム(CDM) や、先進国の企業同士で行う共同実施(JI)によって温暖化ガスの削減投資を行えば長期にわたって自社の排出分を相殺できる。我が国の場合、砂漠化や環境汚染が急速に進む隣国で大々的にCDMを実施すれば、温暖化ガスの削減に加えて黄砂や酸性雨被害などの越境公害の回避も可能となる。多くの企業はこの程度の対策で十分である。省エネや節電といった全社運動が無意味とは言わないが、費用対効果を考えない環境対策は経営とはいえない。


'07.8.10.朝日新聞

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