散歩道<1930>

                        定義集「小説家が大学で学びえたこと」(4)              (1)〜(4)続く
                          アマチュア知識人の大切さ

 私がベソをかく風だったので、先生は愉快そうな表情に戻られました。
 ・・・・ラブレーはもとより、アンリー四世のような王侯も、ガブリエル・デストレのような寵姫
(ちょうき)にも、その没年に自分が達してはじめて、わかってくることがありましたよ。君には私の没年まで生きてもらいたいな。
 その年の五月、ガブリエルの評伝『世間噺
(はなし)・後宮異聞』を完成して病院に入られ、そのまま亡くなりました。来年、私は先生の没年に達します。そこで、先生の全著作をゆっくり読み返すために、小説ほかやっておきたい仕事を今年のうちに片付けます。そしてその読書にあわせて、ここ数年の宿題を果たすつもりです。

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 三月のこの欄に、子供のための「できれば大きい本」を作りたい、と書きました。それを手紙として受け止めてくれたニュージヤージ州の老婦人(装丁家として知られている人)から、薄い本を別々に出して行って、しまいに合本にする装本のプランが贈られてきました。「できるだけ大きい本」にしよう、と・・・・
 教育基本法が改定された時、この勢いに乗って、政府・企業に「取り込まれる」タイプの専門家たちが(かならずしも教育の専門家でなくても)強い声を発し始めるはず、と思いました。そこで私は子供のための薄い本の一冊に、教育アマチュアであることを自覚した上での、批判的な呼びかけを書き込もうと思っています。

'07.6.19.朝日新聞・作家・大江健三郎氏 
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