散歩道<1920>
経済気象台(207)・ヒラメ社会
長い間、経済界を見て痛感するのは、企業の衰退はひとえにトップにかかっているということだ。トップとはそれほど、重たいものだ。そこで私が見聞きした困ったタイプについて述べてみよう。一つは決められないトップである。決められなければ任せれば良いのだが、任すことも大嫌いという場合である。トップの仕事はただ一つ、「会社の目標」を明快にすることだ。企業という大集団をまとめて突撃するのは、目標がなければ手段は烏合の集と化す。戦いにならないのだ。こんなトップに限り、細事にうるさい。軍隊がどこに戦争に行くのか決めず、隊列の組み方、銃の上げ下げまで口うるさく言うようなタイプである。心あるミドルが「これでは会社はダメになる」と自らの隊列だけでは目標を設定し、行動しようとすると「そんなことしろと誰が言った」と突き放す。こうなると皆、何もしないで上の顔色ばかり見ることになり、会社は傾いていく。二つ目には、何でも簡単に決めてしまうタイプである。「あれも、これもやろう」と、どんどん決めていくから、人も体制もついていけない。こんな会社には「それは無理です」と言える人材はおらず、みな責任逃れに工夫を凝らすようになる。面従腹背。とどのつまり、会社は危機を迎える。前者は大企業に多い。これまで「キャッチアップ過程」の中で大きくなったから、前方には自動的に目標があった。わざわざ明示しなくても、やってこられた体験から抜け出せないのだ。後者は中小のトップに多い。成長過程で率先垂範した体験から依然、ぬけきれないでいる。このような集団をヒラメ集団と呼ぶ。ヒラメは砂に隠して目だけうえをにらんでいる。会社だけではない。政党もまた、ヒラメ集団となった時、その任は終わる。
'07.8.16.朝日新聞