散歩道<1918>

                         経済気象台(205)・敗因は構造改革にあらず

 参院選における自民党の惨敗の理由の一つとして、構造改革による地方や農家*1の疲弊が挙げられている。地方に多い1人区で自民党が多数の議席を失ったのは、そのあらわれだという。そこで、構造改革の手綱を緩め財政支出を増やして、痛みを和らげるべきだとの主張が勢いを得ている。たしかに、地方や農家の困難の背景には構造改革がある。財政バランスを回復するために公共工事が削減されて、地方の所得は伸び悔やんだ。地方経済の主要な担い手である中小企業や農業では、一律的な財政支援が縮小され、競争力を有する企業や農家への集約化が図られている。しかし、選挙での敗因を構造改革に求めるのは問題の本質を取り違えていると筆者は考える。地方の経営者や労働者は、グローバリゼーションや人口減少という構造的な環境変化の下で、公共投資が一時的な失業対策にはなっても、地方経済を持続的発展、将来の雇用や所得を創造するエンジンになるとはもはや考えていないはずだ。また農業で生計を立てている人々も、日本の農業が生き残るためには競争力の強化や高付加価値化、効率化が不可欠なことを認識しているだろう。だとしたら、彼らにとって重要なのは、地方経済を牽引する新たな産業や企業をどのようにして作るのか、競争力や付加価値の源泉をどこに求めるのか、どのような戦略でいつまでに実現するのかという構想と具体策だったのではないのか。更に突き詰めて言えば、現在の政権がその成長戦略の中で、地方経済や農業をどのように位置づけているのか、切捨てようとしているのか再興しようとしているのか、その覚悟を彼らは知りたかったのだと思う。しかし安倍首相のみならず自民党の指導者や候補者からは、そのような主張は聞かれなかった。だから、不安に駆られた有権者は自民党から離れた。

'07.8.14.朝日新聞

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