散歩道<1917>
経済気象台(204)・水の低きに就く如し
ニュ−ヨーク、東京、上海、ロンドン、フランクフルトと世界の株価が連鎖的に荒れている。焦げ付いた米住宅融資「サブプライムローン」の債権を多く組み込んでいるヘッジファンドなどに信用不安が波及してきたからだが、源をたどれば世界的な過剰流動性(金余り現象)の咎めが露出してきたものだ。注目すべきは、今の過剰流動性はこうした局所的な異変にとどまらず、国際金融の姿をいびつにしつつあることだ。高値を続けている原油相場は、企業コスト上昇、収益悪化を招き、消費者もガソリン、光熱費の値上がりで消費意欲を減退する。つまり証券市場にとって原油高は「売り」懸念材料だ。ところが、ウオール街の友人らは原油価格の値上がりをあまり恐れなくなっている。原油高は一方で産油国を潤し、経常収支の黒字拡大につながる。潤沢なオイルマネーが投資先を求めて国際金融市場に還流する。ニュ−ヨーク株式投資や米国債購入など産油国の黒字の4分の1が米国に流入しているという統計もある。金余り現象は原油高を「買い」歓迎材料にすりかえてしまっているのだ。「水の低きに就く如し」は国際金融の教科書でもあてはまる例えだった。米国投資の行き先は、先進国の豊かな原資から流れ出て、開発途上国に向かい、途上国の工業化、近代化など経済的離陸に必要な資金をまかなってきた。しかし、いま膨大な外貨準備を保有しているのは、産油国だけではなく、資源国、新興工業国や輸出にわく開発途上国だ。アイア諸国などこれらの国々は手にした外貨を先進国の金融市場に投資、運用し、優先しなければならない国内投資はなおざりにされがちである。国債手金い資金が、言えば川下から川上へ、逆流している。国際金融の異常現象は不健全なのか、受け入れざるを得ない新し現実なのか。洞察力が問われる。
'07.8.9.朝日新聞
関連記事:散歩道<1628>経済気象台(137)・信用不安の足音、<1680>経済気象台(142)・ローン・日米バブル事情、<1896>米発・ 住宅ローンショック(1)・信用不安世界駆ける(1)〜(3)、