散歩道<1879>

                            経済気象台(192)・財政破綻の常識

 バラマキを約束しながらムダな歳出は削れと訴える。消費税率は上げないといいながら、いずれ引き上げは必至とにおわせる。どの政党も、財政破綻という事実を遠巻きにしながら、いいとこ取りで済まそうとする。どの役所がカネを使うか。税と社会保険料、国税と地方税の形で、どの役所がカネを取り立てるか。旧態依然の縄張り争いの上に、プライマリーバランスなどという言葉が踊る。議論を分からなくさせて現状維持が狙いだ。だが事実は隠せない。国民経済計算によれば、05年度で国、地方、社会保障基金の取り立てたカネは計143兆円、使ったカネは計172兆円、差し引き29兆円の赤字だった。国民はこれ以上、使うカネを減らされるのも、取り立てられるカネがふえるのもいやなので、毎年25兆円から30兆円の借金が積みあがる。その後景気回復で税収が伸びたが、構造的な要因が消えるほど、甘くはない。プライマリーバランスの赤字は、財政赤字のうち元利払いを除いた分。これを黒字にするとは「過去の借金は返すしかない。だが新規の分は、心を入れ替えて黒字にする」というものだ。だが心を入れ替えるとは、誰も信じていない。国の赤字を地方の黒字で埋めるという、数字のトリックも見え見えだ。しかも借りたカネを返すのに又借りて、10年物国際を60年かけて返す借り換え債により、ツケはすでに子孫に回っている。社会保障・人口問題研究所によれば、社会保障には04年度で、保険料54兆円を労使折半、税金29兆円を国と地方が3対1で負担、資産収入10兆円を加えて、計93兆円が投入された。国・地方の税収計よりも巨額のカネがいい加減につかわれてきたのだ。カネさえあれば使おうとしている連中にカネを渡せば財政破綻、は常識だ。その常識が通らなければ、財政は本当に破綻する。


'07.7.24.朝日新聞