散歩道<1855>

                           経済気象台(186)・「仕組み」の経済学ー2

19世紀思想の内閣
 本来の目的を外したザル法は論外であるが、法が意図した効果が実現できなかったり、時代の変化に合致しなくなったりすれば、速やかに改廃すべきである。100年前の民法の仕組みが時代にあわなくなるのは当然で、「離婚後300日以内にうまれた子は前夫の子」と推定する民放772条が無戸籍の子供たちを作り出してしまったという問題はその一例である。仕組みの不具合を放置して責任を問う仕組みがないことに加え、拙速な対応で二次被害を起こし、先送りを繰り返して、問題を雲散霧消させる官僚体質も行政の仕組みの大いなる欠陥だが、それ以上に法規制の改変に責任の重い官僚の発言に驚かされる。法務大臣は、時代遅れの仕組みを放置した責任を棚上げにし、かつ男の貞操を担保するわけでもなく、女性の貞操観念を持ち出したセクハラ発言をした。厚生労働大臣は、少子化に悩んだ揚げ句であろうか、女性は「産む機械」とついもらしてしまった。育てられない赤子を救おうと始めた民間医師の「こうのとりポスト」に対しても、首相以下の閣僚からは為政者としての責任を棚上げた他人事のような発言がめだった。人は問わず語りの発言に、ホンネの思想をもらすものである。21世紀の社会のしくみづくりを推進すべき内閣に、19世紀の差別しそうに呪縛された政治家を起用している政権というのも驚くべきものがある。安部政権が提唱する「戦後レジームからの脱却」からは、戦前の国家主義体制という「アンシャーン・レジーム」の腹壁が(ふくへき)透けて見えるが、閣僚や官僚は歴史の歯車をさらに戻したいのであろう。相次ぐ役所や閣僚のスキャンダルの果てに参院選で惨敗した後も続投の意欲を見せる首相だが、同じような内閣を組織するのであれば更に危ういものがある。

'07.6.28.朝日新聞

関連記事:散歩道<1852>「仕組み」の経済学−1<1982>「仕組み」の経済学ー3、<2095>-5、<2098>-6、<2212>-9、<2249>-10、<2311>-11、