散歩道<1846>

                         経済気象台(182)・開いた口へ牡丹餅

 米連邦準備制度理事会(FRB) は6月28日、インフレ圧力に警戒感を示し、利上げを見送った。これでフェデラルファンド(FF)金利は1年間にわたって同じ水準が続いている。興味深いのはこの間、ドルが軟調を続けていることだ。対円、人民元相場は別として、ユーロや新興工業国、資源国通貨にたいしては、軒並みドル安、弱含みである。この結果、価格面で競争力の出て来た米国の輸出にドライブがかかり、12年ぶりに貿易赤字が縮小するのではないかという観測もある。米経済は住宅ブームにブレーキがかかり、景気に陰りが出てきたが、その落ち込みを輸出好調が支えている姿が見える。米国内の輸出産業の雇用が確保されて失業率の低下を防ぎ、さらに輸入原油価格の高騰も乗り越えられるほど製造業に活況が出ている。ドル安はFRBの利上げ見送りの隠れた成分かも知れない。デフレ脱却に苦慮している日本経済が、円安による輸出好調で景況に明るさが出ているのに、日銀が利上げに踏み切れないのにも似ている。ワシントンの友人は久しぶりに輸出国アメリカのイメージが復活したことや感傷的だが、定例のG7や主要国サミットなどで、米政府が通貨問題に深入りしてこないのもううなずける。思いがけぬ幸運「開いた口へ牡丹餅」。と、当面、ドル安はブッシュ政権にも好都合だろう。ただ、急激なドル安は国際通貨危機を招く。ドルの行方は輸出不振に陥るEU諸国がどこまでユーロ高ドル安に絶えられるか。新興国の成長が持続するのか、肝心の米経済がいつ上向くのかにも左右される。ドル反騰についてウォール街の友人は早ければ今年後半か、来年前半、いや後半と見方に幅がある。輸出好調に対するワシントンの思惑を横目ににらんでいるから、来年の大統領選もからんでくることも間違いない。

'07.7.10.朝日新聞