散歩道<1838>
経済気象台(177)・二つの金利上昇圧力
世界の金利上昇傾向から遊離していた日本の長期金利も、ようやく長期金利の気配を見せ始めた。昨年秋以降、世界の金利上昇を無視するように1.6%〜1.7%台で安定していた日本の10年国債利回りが1.8%台に乗せてきた。この長期金利上昇には、少なくとも二つの圧力が働いている。まず世界の市場がインフレ懸念から債権投資を控えるようになってきたことだ。昨年末からの半年間に、10年国債の利回りはドイツや英国で1ポイント近く上昇し、米国でも4.4%から5%弱へと上昇している。その中で日本だけが年金や国内金融機関の買いによって低金利を維持できたのだが、さすがにグローバルな債権売りに抗しきれなくなった。もう一つが日銀による金利正常化への訴えが浸透してきたことだ。つまり目先の物価よりも、超低金利を続けていくことによる経済のゆがみが、後々の経済をかえって不安定にする。金利の低い日本の円で大量に資金調達した海外のファンドが、海外の不動産や資源価格を押し上げ、回りまわって日本の不動産にも投資を始めた。また国内の低金利に飽き足りない個人が大規模に外資資産の購入に向かい、これが円安を高進させている一方、個人の為替リスクをそれだけ大きくしている。いずれ円高に反転した際には、機関投資家のように機動的なヘッジでリスクを回避することができず、大きな損失を被るリスクがある。当局の姿勢を後押しするように、景気も一部の後退懸念をよそに、設備投資や雇用が良好であることが分った。財務省の「法人企業統計」は設備投資が年明け後も2けたの増加を維持していることを示し、3%台に低下した4月の失業率はこの9年間で最も低く、手不足がいずれ賃金上昇につながる可能性を示唆した。金利の正常化が現実化すれば、長期金利もそれに見合った水準に上昇することになる。
'07.6.7.朝日新聞