散歩道<1836>

                       経済気象台(175)・日本株出遅れの真犯人

 米国や中国など、世界の主要株価が高値を更新する中で、日本株の出遅れの感が際立っている。消費者物価の前年比マイナス幅拡大で、日本経済がデフレから脱却できるのか不安視する投資家が増え、安倍政権の改革意欲が後退し、再び官僚政治に戻るとの不安が海外投資家を躊躇(ちゅうちょ)させている点も指摘される。しかし、このところ日本株を売りたたいているのは、海外の投資家ではない。少なくとも彼らは日本のデフレ脱却を読んで買い越しを続けている。実際に大きな売りを浴びせているのは「信託銀行」を経由した日本の公的機関だ。株の比率を縛られている公的年金の他、銀行等保有株式取得機構、預金保険機構も売っているようだ。かって金融危機に際して体力が低下した銀行が大量に株を売れば、市場を一層冷やすとして、02年に政府は取得機構に買い取らすことを決めた。また旧長銀、旧日債銀の破綻(はたん)に伴い、預金保険機構に保有株が譲渡された。今年になって信託銀行から、月に2千億円前後の継続的な売りが出ているが、その多くが、これら公的機関による売却とみられる。公的年金は株価上昇で株の比率が高まった分を売るのだが、取得機構と預金保険機構の保有株は合わせると、簿価で5兆円近くに上る。これら公的機関による株の売却が、日本株を抑圧している「真犯人」だ。株価は企業の投資や消費など景気の大きな影響を与える。株価が下がれば、景気を無用に冷やす恐れがある。もともと市場を通さず直接買い取ったり譲渡されたりした株を、市場で売れば、相場を下げるのは目に見えている。秋以降は日銀保有分も売り出される。金融不安は遠のき、株価も一頃より高くなった。株の売却で政府には大きな利益となる。しかし、それでも株価を圧迫しない売り方をするとか、銀行に買い戻させるなどの工夫があってもよい。

'07.5.9.朝日新聞