散歩道<1813>

                  この人この話題・
都市集中(3)選択は二つ、発想の大転換を         (1)〜(4)続く
       
  このさい看過出来ないのは昨今の少子化の効果であって、これがいやがうえにも集中化に拍車をかけている。少子化とは単に人口減少を意味するだけでなく、家庭で一人の子供にかけられる費用が増えたということだからである。昔なら貧しい家の多数の子女は故郷に残ったものだが、今や一人っ子になった子供は自由に東京に遊学できる。現にこれが原因で、地方の私立大学は一足早く学生数の減少に悩んでいる。皮肉をいえば、国が地方に送る老齢年金でさえも、じつは老人の手から孫に渡って、都市に還流していると見ることが出来る。
 この急激な都市集中の流れは、それが現代文明の勢いであるだけに、行政もとめることができない。先の夕張市の破産が典型的な例であって、市当局が町に住民を引き止めるために、大都市なみの施設を懸命に整えようとしたのが赤字の一因であった。義務教育の学校も例にもれず、山村では学校統合は避けられない運命になっている。財政の問題もあるが、あまりに小さい学校は子供の社会性を養ううえでも不安があるからである。
 さらに21世紀の問題として見たとき、住民の地方分散は環境保護の点でも、困難が多い。広域にわたる大量の物流長距離の通勤や通学は当然エネルギーの消費を増やす。電力も送電線が伸びればロスが出るし、道路や鉄道の建設はつねに環境を破壊する。工場を分散することも昔のように雇用促進にはつながらず、その割には製品と廃棄物の輸送量を多くするのは、明白ではないだろうか。

'07.7.2.朝日新聞・劇作家・山崎正和氏

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