散歩道<1790>

                      経済気象台(173)・専門的知識

 ここ数ヶ月、公務員制度のあり方を考える材料に事かかない。現在、国会では天下りの禁止、再就職斡旋をめぐる法案処理の議論が活発である。権限を背景にした天下りの禁止は当然であるが、公務員の総人権費予算抑制の中で、高級官僚全員が60歳まで役所で働けるシステムを設計することは難しい。真に流動的な労働市場が存在すれば民間と官庁を行き来する回転ドアも可能だが、現実には大手民間企業でも退職する役員、幹部職員を関連企業に斡旋している実態を考えると、人材バンクがワークするとは思えない。年金の未払い問題も、公的組織のトップの役割りは何かを考えさせられる出来事であった。ごく最近まで、社会保険庁長官は厚生・厚生労働省の役人が就任し、1〜2年で交代する仕組みが続いていた。トップは官僚として有能であっただろうが、年金の支払いや保険料の徴収といった業務執行に関する専門家ではなく。未払いという技術的正確の強い問題を認識できていたとは思えない。他方、近年は民間登用の掛け声の下に、公的機関のトップや政策形成の責任あるポストに財界出身者や学者が就任することが増えている。しかし、企業経営や学者としての経験があれば公的な仕事も楽にこなせるほど、現実は甘くない。政策についても業務執行についても専門的知識は不可欠だが、現状は専門的知識蓄積してきた高級公務員の人的資本は活用されず、アマチュアリズムが進行している。最後に、公務員人気は凋落(ちょうらく)が著しい。有名大学の卒業生が官庁に集中するというのは明らかに異常な現象であった。しかし、他方で日本の将来を考えると、パブリックサーバントの仕事の価値を全否定するかのような最近の風潮も危険である。この複雑な方程式を解く答えを見つけるのは容易ではないが、どのような改革をすすめるにせよ、キーワードは専門的知識ではなかろうか。
'07.6.20朝日新聞