散歩道<1789>

                     経済気象台(172)・
三角合併解禁 

 いよいよ三角合併の解禁であるが、施行を延期したこの1年の学修効果は少なくなかった。敵対的買収は国内でも容易でないことが実例とともに意識化された。又、米国でもその成功例は少ないことが分かり、過度のアレルギーは減退した。いざという場合に備えての定款の整備も進んだ。M&A は規模や市場占拠率の拡大による競争力の強化や経営資源の活性化などの効用があり、日本の企業によっても今後さらに活用されていくと思われる。同時にこの学修期間を通じて浮上したいくつのテーマがある。そのい一つは「株式の持ち合い」の見直しである。持ち合いは擬似資本とか、癒着の象徴などと批判され、特に銀行の持ち合いはBIS規制による自己資本比率改善を迫られて急激に減退した。しかし、M&A にも様々なケースがある。例えば「日本の鉄鋼技術の取得」を目的とする国際的M&Aのような場合だ、このような技術やシステムは個別企業のことでもあるが、長年かけて行政と民間、いわば国民がつくりあげた貴重な蓄積でもある。米国のように「国防上の理由」で超法規的にM&A を差し止めるほどのことではないとしても、何らかの自衛は考えてしかるべきだろう。いま一つは「顔の見えない株主」の不気味な存在である。今では多くの会社の大株主に信託銀行が名を連ねている。その実態はヘッジファンドや、事業会社であったリする。顔が見えないのは、経済的な利害以外の人間的信頼関係を深めることが難しいことを意味する。それがここまで比重を高めると、「株主」の本来のありようから大きく逸脱してゆくとも考えられる。これに関連して、金融庁は遅ればせながら、ヘッジファンドの調査に着手すると伝えられているが、ぜひ実態を深くとらえて、適切な対応をしてもらいたいものである。

'07.5.8.朝日新聞