散歩道<1788>

                          経済気象台(171)・部品を取るインド

 インドではこの半年、民族系の自動車部品会社が、好調な自動車ビジネスで蓄えた資金を使い、欧米の鋳造部品や鋳造部品のメーカーを買収するケースが急増している。鋳造部品や鋳造部品はギイアやシャフト、ローター、エンジンや変速機、ブレーキ、サスペンシヨンを構成する重要部品である。ただ、自動車部品産業の中でも、この分野は電子・通信機器のような華やかな技術革新がなく、コスト削減要求が厳しい。他の部品に比べて利益率も低く、投資家からもあまり評価されない。生産現場の環境は良好とはいいがたく、向上立地や従業員の採用が難しいのが実情とされる。このため欧米では景気後退や業績悪化のたびに、事業売却の検討対象とされてきた経緯がある。しかし、こうした部品は、「走る」「曲がる」「止まる」という自動車の基本機能を影で支える重要なパーツだ。高度な加工精度と耐久品質が問われる。加工精度の水準は走行性能に影響し、品質不良は大事故にもなるのだ。インド企業が欧米の部品メーカーの獲得に動いているのは、こうした分野で、先進国の水準加工精度や耐久品質で生産するノウハウの獲得が容易でないと言う事情がある。特に、ここ数年、生産が急拡大している新興国では、部品そのものが不足している。欧米部品メーカーを獲得できれば、世界最高水準の生産ノウハウばかりか、先進国自動車メーカーへの納入ルートも獲得できる。それを欧米企業の方では売却したがっているのだから、話は早いと言うわけだ。中国では、自動車産業が成長期に蓄えた資金を車体開発に投入した。一方、インドは自動車の基本性能を支える重要部品の獲得に動いている。両国の戦略の違いが、招来どのように影響するのかも興味深い。

'7.6.12.朝日新聞

関連記事:散歩道<135>日本人に必要な教育:発言する訓練、 インド人に必要な教育:しゃべらせない教育、<237>暑いインドに冷蔵物流網、<2284>インド人の夢