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                    戦後処理の再考を(2)・中国の反日デモ何を汲み取るべきか 

 中国の一連の反日デモについて色々な理由が指摘されているが、根本的な原因は歴史認識の問題だ。戦後処理の問題を旨く解決できない限り前に進めない。歴史認識の問題は日本と韓国の間で解決したように見えたが、竹島問題を機に、また元に戻ってしまった。この問題がいかに大変な問題かが日本でも理解されはじめたのではないか。日中関係でも同じことだ。過去の歴史に関して日本では「いつまで謝罪すればいいのか」という声もあるが」一部の政治家や「新しい教科書を作る会」などの一部民間人が政府の立場と違う意見を表明しており中国の人たちは「どちらを信用すればいいのか」という不安を与えている。歴史教科書について言えば、検定のたびに言い回しが変わってきた。「慰安婦」の用語がすべての教科書からなくなるなど、少しずつ後退しているのではないか。一方、「情報の伝達」の面での問題もある。日本政府や国民の多くは歴史に対してしっかりとした認識をもっており、平和友好的なアジアをつくっていこうという思いを持っている。だが、日本と同様に中国でもメディア間の競争が激しくなりつつあり、敏感な問題を競うように取り上げる.その結果、「負の情報」が他の情報を覆い隠してしまっている。ただ、日本の学生は近現代の歴史をあまり知らないまま中国と向きあっている。歴史の授業でしっかり学ぶのは明治維新くらいまで。一方、中国の若者は近現代の歴史は学んでいるが、今の日本の姿は必ずしも正しく理解していない。この落差は大きい。今回のデモ拡大には、インターネットが大きな役割を果たし、大学生が中心となった。彼らにはネットを長時間利用する時間、環境があるからだろう。大学生が作りだした「ネット世論」を、中国の指導部も「民意の一部」として無視できなくなっている。しかしネット上の意見には無責任のものも多い、様々な意見が飛び交い中国政府にとっても、望まない方向に進んでしまう危険がある。反日デモは、貧富の格差など中国内部の問題に対する「不満のはけ口」として起こったと日本では紹介されているが、中国のある調査では9割の怒りは歴史問題に向かっている。ただ、デモが過激な方向に走ったのは「大学生中心」だった為という面がある。社会人経験がない反面、外交・政治問題には敏感だ。社会に出て仕事の上で日本企業とのつながりがでてくれば、日本に対する見方も変わってくる。暴力行為には賛成できない。留学生は日中の掛け橋になろうとしている人たちだ。日本企業や、日本料理店を標的にするのはおかしい。日本政府は投石による大使館の被害などについて謝罪と賠償を中国に求め、中国政府は歴史認識での対応を改めるよう日本に求めた。日本は法的な問題に注目し、中国は根源的な問題を指摘している。意思の疎通が出来ておらず、かみ合っていない。打ち解けた雰囲気で首脳会談が出来ていないのが大きな理由だ。日本政府はもっと自らの立場を説明し、中国での日本理解を促す必要がある。外交で事前意見交換を深めることで、問題の深刻化を防げることもある。歴史問題では、教育の中で近現代しをしっかり取り上げ、自らにとっても恥ずかしいこと、不愉快なことも教えていくべきだ。

'05.4.14. 朝日新聞 千葉商科大教授趙軍氏


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