散歩道<1782>
変更471〜1782
戦後処理の再考を(1)・中国の反日デモ何を汲み取るべきか
中国や韓国の反日行動を見るうえで重要なのは、日本と中韓両国の国民感情に、正反対の動きが出てきたからだ。日本では「もういいではないか」という戦争という過去から脱却したい機運がある。中国、韓国では日本は60年間、いったい戦後処理で何をしてきたのか」といういらだちが強く出ている。今の日中関係を「政冷経熱」と表現する。日本の場合は政経分離で中国とは経済さえ旨く行けばよい」という思いがこめられている。中国側は対等で基本的な国家関係を処理すべき政治について、どうでもいいと日本は考えている」と見下されているように感じる。小泉首相が「未来志向で」と言っても、中国側は「日本は過去はどうでもいいと考えている」と逆の受け止め方だ。これは韓国も同様である。戦後中国の対日処理方針は、戦争は基本的に日本の軍国ファッシストによるもので、日本国民は中国と同じように「戦争被害者である」とするものだった。この説明で日本はある種の免責を受けたような受け止め方をした。しかしこれはフィクションであり、満州事変からの戦争は総力戦で、日本国民の支持がなければ戦かえなかった。「日本国民も戦争被害者」という虚構が生き続けるためには、戦争指導者に対する責任を日本も問う必要があった。ところが首相の靖国神社公式参拝で、中国政府として国民への説明根拠が崩れ、日本は一切の責任を放棄したとみなされる。虚構の崩壊が一方で愛国主義教育につながり、日本側はそれを「反日教育」と見る。いま中国では9500万人のネット人口がおり、その75%が20〜30代で、日本の政治家の国内向け発言も即、中国に伝わり、さらに過敏な反応が出てくる。今年はさらに反日行動が高まる可能性がある。すでに中国の代表的愛国運動である5・4運動の記念日に向けてネットで動き出しており、韓国でも植民地化の起点とされる第2次日韓協約100周年が問題となる。国民としては、反日行動にいきり立つのではなく、平和憲法の下で培ってきた国際感覚を今こそ示すべきだ。政府は「冷静に」と繰り返すが、ただ時を過ごすのでは悪循環が永遠に続くことになる。もつれた糸を解きほぐし、次世代に残さない責任を強く私たちは強く認識する必要がある。
具体的にやるべきことを4点挙げたい@大使館などへの破壊行為に対して、日本政府は断固と姿勢で行為者の処罰と賠償を追及する。A政治発言は慎重に「(反日は)貧富の差のはけ口のひとつ。当局もガス抜きで見過ごしている」と国内問題に還元したが、こうした発言ほど国民感情を逆でし、交渉相手の立場を損なうものはないB外交について首相は国民への説明責任を果たすべきだ。C日中、日韓の歴史認識を転換する絶好機と捉え小泉首相は両国を訪れ公式の場で日本の考えを明確にすべきである。この60年日本は自衛隊は持ったが、戦場で銃弾をはなったことはなく、戦前とは違う。対中ODA(政府の途上国援助)についても、殆どの中国人は知らない。憲法改正にしても、日本の論議を説明すべきである。私達が今問われているのは「戦争責任」ではなく「戦後責任」、つまり戦後処理をどう果たしてきたかを自ら真剣に再検討する機会でもある。
'05.4.14、朝日新聞、京都大学 山室教授
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