散歩道<1761>

         けいざいノート・「デフレの罠」?(4)低金利が問題を再生産か  「脱却」に必要な発想転換   (1)〜(4)続く

 均衡状態の経済において、「長期的に日銀が低金利政策を続ける」という期待が市場に広がると、その期待のためにデフレが続く可能性がある。つまり、低金利が続くという期待が、デフレを再生産するわけである。これは経済政策の実務の世界ではなじみのない話だが、経済理論の世界では、以前からその可能性が指摘されていた。
 経済が均衡状態になると、実質金利は資本の収益性によって決定されるから、プラスの値になる。一方、日銀の政策によって、名目金利から物価上昇率を差し引いたもの、というのが実質金利の定義である。すると、名目金利がゼロ近辺で、実質金利がプラスなら、物価上昇率はマイナスにならざるを得ない。つまりデフレは続く。
 デフレを脱却しようとして日銀が低金利政策を続ければ続けるほど、均衡状態の経済では、デフレを長引かせてしまうのである。
 このような「デフレの罠」説はケインズ経済学的な説明とは全く違うが、均衡状態の経済を分析する新古典派経済学の立場からは必ずしも否定できない。ただ、その場合、経済は均衡していて不況ではないのだから、デフレを脱却する必要もない。
 この新しい発想に従えば、デフレ脱却のために必要な政策も、現在と正反対のものになる。現実感は乏しいが、「デフレを脱却するために金利を上げる」という政策を、ちょっとは考えるべきなのかもしれない。


'07.6.16.朝日新聞

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