散歩道<1751>
経済気象台(161)・現実と意識・心 ・・・・・発想を変える
一流ホテルの支配人によると、景気は好調といわれながら、いま一つ活気がない。なぜかと問うと、集まってくる人たちの顔に精気がない、とのこと。実際には、このホテル自体業績も結構良いのだが、実感として明るさがないということだろう。経済は底上げされてきたが、企業による明暗の差は開いている。また、好業績が従業員の所得増に結びつき、経済全体に普及するかってのような良循環の道筋も見えにくくなっている。この現象から、何を読み取ればよいのだろうか。企業経営の要は「人」にある。一人ひとりの真価が発揮されて元気になり、全体として顧客や社会の必要、痛みに応える力がつくというのがもっとも望ましいことだろう。しかし、現実には業績の向上や維持のほうが重視され、それを生み出す土台やプロセス、条件の耕しは軽視される傾向がある。それは、お金や技術・システムの力の方が経営者や従業員の人や仕事への関わり方の質よりも重要だと考えられてきたからだろう。そのことは、経済全体の良循環が弱まってきたことともつながっている。留意すべきはこの経営観の背景にある「現実とそれを生み出す人間の心の関係」を重視せず、切り離す方が科学的、実証的な行き方だという先入観である。しかしようやく、多くの経営者はこのおかしさに気づき始めている。また、その目で見れば発見も多い。たとえばコンプライアンスの問題についても、優れたシステムを整えることは必要だが、それ以上に重要なのは会社の幹部や従業員の意識、心の問題である。そこから見れば、会社の理念やアイデンティティーを深め、それを一つに収斂していく努力は、経営者にとって特に大切な役割りである。そこにはまだかなり余地がある、という自覚は活性化への大きな原動力になると思われる。
'07.6.6.朝日新聞 