散歩道<1750>

                         夕陽妄語(4)・四月バカ                 (1)〜(4)続く   

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 遇人でも狂人でもなく、この世界ともう一つの世界との双方に係わり、そのことを簡潔な言葉で要約したのは、あの有名な「マクベス」の三人の魔女である。<Fair is foul, and foul is fair>。訳は十人十色で定訳はないようだが、要するにfairは良いこと、美しいこと、すべて肯定的なことを意味し、foulはその反対で、悪いこと、汚いこと、否定的なことを意味する。人間の世界にとって肯定的なことは、魔女の世界にとって否定的であり、この世界にとっては悪いことは、魔界にとっては良いことだという。これはそのまま二つの異なる世界における二つの異なる価値体系、すなわち二つの異なる価値判断の基準の指摘に他ならない。それらこそあらゆる時とあらゆる場所で起こる異文化接触の基本問題であるだろう。殊に紛争解決の問題。たとえば戦後長い時がたった今も「北方領土四島」の帰属問題は少しも解決に近づいていない。日本側は、相手方の立場とその背景を正確に理解してきたのだろうか。また「核武装問題」について、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の行動に、かれらの立場を正確に理解した上で、日本政府はもっとも合理的な対策を講じているのだろうか。日本国内の経済的な「格差問題」について政府にはどういう見通(みとお)しと政策があるのだろうか。どうもわからぬことが多すぎると私が考え始めたとき、2007年4月1日の昼寝の夢は覚めた。

'07.4.21.朝日新聞・評論家・加藤周一氏

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