散歩道<1740>
経済気象台(159)・人口減少下で何が起きたか
日本の人口が減少を始めた。政府機関の推計によれば、総人口はこのまま減少を続けて、約40年後には1億人を割り込むという。人口減少は国力の衰退という暗いイメージを我々に呼びおこさせる。実際、人口減少は、年率1.5%といわれる潜在成長率をさらに押し下げて、いずれマイナス成長=経済規模の縮小をもたらす可能性も否定できない。また、現在3%にまで下がった家計貯蓄率が、高齢化によってさらに低下すれば、日本は経常赤字国に転落してしまうかもしれない。ところで、歴史を振り返ってみると、人口の持続的現象は決してまれなことではなかったことが分かる。古くは古代ギリシャ・ローマ、中国「三国志」の時代、その後は14世紀のヨーロッパなど、人口が2〜4割(あるいはそれ以上)も減少した時代があった。日本でも、江戸時代中期の18世紀は、人口の減少・停滞が100年以上続いた。それらの背景には、戦争や疾病、飢饉(ききん) などがあったが、それとともに当時の中心産業である農業生産力の天井、出産調整による人口コントロールなどの要因があったと指摘されている。では、これらの時期は国力が衰退し、豊かさも失われた時代だったのかというと、事実はどうも逆のようである。中世ヨーロッパでは、生産性が高い分野へ経済資源の集約や一人当たり所得の向上がみられた。それが時代資本主義の生成や産業革命を準備した可能性がある。江戸時代の日本でも、1人当たり所得水準=豊かさが維持され、さまざまな技術や文化が培われた。明治以降の急速な近代化や第2次大戦後の迅速な戦後復興の背景に、江戸時代における優れた技術や知識の蓄積があったことは、紛れもない事実である。だとすれば、人口減少時代において後世に何を残すかに思いをはせる方が、はるかに夢がある。
'07.5.29.朝日新聞
関連記事:散歩道<792>人口減は明か暗か(1)〜(4)、<796>対談・どうする少子化(1)〜(4)、<検索>社説・論評