散歩道<1737>
経済気象台(156)・バイオエネルギー
6月のハイリゲンダム・サミットに向けて温暖ガス削減数値目標をどうするか、いやそれ以前にこれを設定するか否かで各国が揺れている。世界的異常気象中の温暖化対策が喫緊かつ長期課題だとの認識は基本的に共通しているが、産業界の思惑、経済動向などで各国の駆け引きが繰り返され、議論の着地点は不透明である。この議論の中でも有効な対策としてバイオエネルギーが注目されている。空気中の2酸化炭素を光合成で吸収した原料のため、温暖化ガスを増加させないからだ。しかし、注目が深かまるとともに、穀物、糖類またオレンジなどの価格が上昇している。いずれも自動車の代替燃料となるバイオエタノールの原料が、その生産拡大による転作で供給が減ったものである。確かにバイオエネルギーは有効策の一つだが、真に有効であるためには条件がありそうである。まず休眠しているものの活用であるべきで、現に活用しているものを急激に転用することは避けるべきである。たとえば人間や家畜が食べているトーモロコシを取り上げてしまうと、エネルギー問題は解決したとしても食糧問題が少なくとも短期的には発生することになる。これと同様なことは土地、労働力などの経営資源全体にいえる。さらに、バイオエネルギーの生産段階での温暖化ガス発生にも留意すべきである。その原料を供給する産業である農業は化学肥料、農業機械などを高度に用いているため今日ではエネルギー多消費産業であることを忘れてはならない。バイオエネルギーで温暖化ガスが減っても、その生産段階で温暖化ガスが増えてしまっては元も子もない。中間に投入するものもバイオエネルギーないしは温暖化からフリーでなければ意味がないことを認識すべきである。システマティックな構想なしでは、バイオエネルギーは無効な流行に終わる恐れがある。
'07.5.25.朝日新聞
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