散歩途<1734>
窓・「礎」の危機
さまざまなモノを観察し、測定する。科学や技術の基本である。その基本を支える技術が危うくなっているらしい。東京・六本木の日本学術会議で先週、「科学技術立国の礎」をテーマとしたシンポジュームが開かれた。副題に「日本の計測・観察技術を再興する」とあった。企画したのは、日立製作所フェローの外村彰さんだ。「海外から観測装置などを買ってきてボタンを押せばいい。そんな甘い考えがひろがり、自ら装置を開発する努力がおろそかにされている。このままでは日本の優位が揺らぐ」と警告した。小柴昌俊東大名誉教授はニュートリノ観測でノーベル賞に輝いたカミオカンテの計画を振り返り、自ら装置を開発してこそ、独創的な研究が出来ると強調した。米国の後追いでは二流にしかならないと。16倍の感度の検出器を浜松ホトニクスと共同開発したんだ。その結果、同社は世界の6割のシエアを握ることになった。そういえば、同じ学術会議でちょうど1年前に開かれたシンポジュームのテーマも「礎の学問数学」だった。諸外国はますます数学に力を入れているのに、日本では逆に先き細りだという危機感から開かれた。礎の危機が叫ばれるのはなぜだろう。礎を築くには、時間も手間もかかる。成果がすぐには見えないことも多い。短期的に成果を求める風潮が、そんな研究を日陰に追いやっているのではないか。大きな花を咲かせる為にも、ここは、長期的な視点が必要だ。
'07.5.17.朝日新聞
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