散歩道<1720>

                    私の視点・スポーツ推薦制(1)・中学生には弊害が大きい           (1)〜(2)続く

 昨今、高校生野球部員への特待生制度が問題になっているが、マスコミの論調はおおむねこの制度には好意的で、一芸に優れたものが優遇されるのは当然との意見が優勢のように思える。しかし特待生制度を含む、高校入試でのスポーツ推薦制度は弊害が大きく、すべてのスポーツにおいて廃止すべきであると私は考える。最大の理由は、中学生にスポーツ推薦入学の可能性をちらつかせることは学業への意欲を失わせ、義務教育の放棄につながる恐れがあるからだ。これが本人の意思ならともかく、親、教師、コーチらから「君は勉強しなくてもいいからスポーツをやっていなさい」と指示された場合に、それでも学業の必要性を自ら理解してこれを真剣に続ける者がどれだけいるだろうか。私は、中学生という人生の早い段階では、学業全般をバランスようく学ばせる必要があると思っている。数年前まで私はある大学の体育学部で教えていた。学生たちの過半数はいわゆるスポーツ推薦またはそれに準じた制度で入学してきた五輪金メダルを含むスポーツエリートたちだった。しかし、かれらの多くは学力が全く不足しており、小学生レベルの読み書きや計算さえ満足に出来ないものがいたのである。かな文字ばかりのつたない文章で埋められ多答案やリポートを前にして、私はいったい最高学府の教員なのかと自問したこともしばしばだった。当然学問への興味も持ち合わせていないものが大多数で、一般入試で入ってきた学生たちがおおむね大学生にふさわしい学力と向学心をもっていたのとは対照的であった。

'07.5.18.朝日新聞・愛知医科大学准教授(小児心理学)馬場礼三氏