散歩道<1703>
社説21提言・日本の新戦略(8)-3・経済のグロバール化・弊害と向き合い、上手に果実を増やす (1)〜(3)続く
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だからといって、グロバル化をせき止めようとすればどうなるか。前回のグローバル化は世界大戦と大恐慌によってストップし、政府が市場に極限まで介入する統制経済やブロック化へと逆流した。先進国が豊かさを守るため、途上国への門戸を閉ざすことは許されない。自由な市場経済は強力で、時には暴走する。それを抑える当時の力があってこそ、グローバル経済は豊かな果実を実らせてくれる。世界貿易機関(WTO)が進めている貿易交渉を生き返らせることが、その試金石となる。自国の都合だけでなく相手の利益も考えながら、ゆずりあって国際経済の新しいルールを築いていく。そうした努力は、国際政治の面でも平和と安定の基盤をより確かなものとするだろう。一番いけないのは、先進国が保護主義に走ることだ。先進国が農産物の保護を続ければ、一次産品しか輸出するものがない途上国は貿易の恩恵を受けることが出来なくなる。日本はどうして農産物市場を途上国に開放しないのか。非難の声がアジアをはじめ途上国に広がっている。高い関税で農家を守るのではなく、経営が難しい場合は所得を補償する政策が始まった。もとより米国のように広大な土地での農業と太刀打ちできない。コストを下げ競争力をつける改革を進めながら、財政支援で日本農業をどこまで守るのか、冷静な議論が求められる。働く人材を世界に求めることも欠かせない。受け入れ人数を増やし、専門職だけでなく幅広く受け入れる態勢づくりを急ぎたい。外国資本の導入も、他の先進国にくらべて少なすぎる。我が国は人口が減り始め、世界一のスピードで高齢化が進む、グロバル経済の活力を取り込んで、世界の国々とともに成長する以外にない。とかく内向きの姿勢を思い切って代えることだ。同時に国内で広がってきた格差の問題に取り組まなくてはならない。とくに若い世代で失業率が高止まりし、所得の格差が大きくなっている。富が過度に集中するのを防いで所得を再配分する一方で、途上国の人より質の高い仕事が出来るように教育と訓練を施す。そこに力を入れるべきだ。「格差」に国民が敏感になっているのは、構造改革にょり既得権益が揺らいできた表れでもある。改革の加速こそが未来を切り開くことを忘れてはならない。
'07.5.3.朝日新聞 