散歩道<1702>
社説21提言・日本の新戦略(8)-2・経済のグロバール化・弊害と向き合い、上手に果実を増やす (1)〜(3)続く
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躍動の時代は19世紀後半から20世紀はじめにかけても見られたが、舞台は産業革命発祥の地・ヨーロッパと新大陸・アメリカに限られていた。1980年代からはじまった現代のそれは、アジアの台頭が最大の特徴だ。80年代の米国や英国の政権は市場の働きを最大限に使い、各国に市場開放を求める新自由主義の政策を採った。これが社会主義の崩壊と重なって世界へ広まり多国籍企業の活動を刺激して、グローバル化を加速させた。経済成長と豊かな国民生活を運んでくるはずのグローバル経済は、しかし、内側にも弱さを抱えている。世界銀行が02年にまとめたリポートはこう指摘した。「発展途上国は、グローバル化して貧困が急速に減っている国と、グローバル化せずに貧困が深刻化している国に分かれてしまった」波に乗ることが出来た中国やインドの人口30億人に対し、乗れなかったアフリカや南米の20億人。後者の国々は希望を持てないでいる。国どうしの格差だけではない。国内で所得格差が拡大した原因をグローバル経済に求める声も大きい。困ったことに、自由貿易のリーダーを自認する米国で反感が強まっている。途上国の低賃金で作った商品が流入して自分たちの賃金を下げ、失業をもたらすというのである。欧州では、アフリカや中東からの移民の増大が重荷になりつつある。一方で、世界経済への統合で貧困を脱しようとしている中国でも、格差の是正が政府の大きな課題になっている。。世界市場での競争は勝者と敗者をはっきりさせてしまう。また、地球環境や伝統的な文化といった、経済の尺度で測れない価値には無頓着になりがちだ。市場原理をすみずみまで行き渡らせればこうした問題もすべて解決する、という考え方は説得力を持たない。
'07.5.3.朝日新聞 