散歩道<1695>

                       社説・憲法60年(3)・戦後からの脱却より発展を            (1)〜(4)続く

  こうした言葉からはっきり読み取れるのは、戦後日本社会に対する太田さんの肯定的な視線であり、楽観主義だ。太田さんも読んだという「敗北を抱きしめて」の著者で、米国の日本史研究者ジョン・ダワー・マサチューセッツ工科大教授は、次のように書いている。
 「なんと多くの日本人が平和と民主主義の理想を真剣に考えていたことか!もちろん、平和と民主主義こそ、私自身の国が戦い取ろうと努力している当のものにほかならない。日本人も私たちと同じ夢と希望を持ち、同じ理想と戦いを共有しているんだ」
 憲法を米国の「押しつけ」と捕らえるのではなく。理想に突き動かされた日米両国の人々による「合作」と見る。そんな柔らかな見方でふたりには共通するものがある。
 憲法によって私たちの社会は大きく変貌した。
 男女の平等が保障され、だれもが選挙権を持つ。何を主張しようと、どんな宗教を信じても自由であり、不敬罪や治安維持法などは存立しえない社会になった。天皇から国民へ主権が移り、国民が主人公になった。
 太田さんが評価するのは、この自由と民主主義の価値が憲法によって日本にもたらされ、さらには戦後社会に深く根付いたということだろう。


'07.5.2.朝日新聞