散歩道<1696>
社説・憲法60年(4)・戦後からの脱却より発展を (1)〜(4)続く
外交の政策の18番 不思議なのは、憲法について否定的なことを言う安倍氏が、自由や民主主義の価値を語るときはうってかわっえ肯定的な姿勢に転じることだ。いまや、外交の政策の「十八番」(おはこ)に使っている。
「日本と米国は普遍的な価値を共有している」として、日米同盟の強化を言う。「共通の価値」を持つ豪州やインドと連携して中国を牽制(けんせい)する。NATO(北大西洋条約機構)とも連携する。総称して「価値の外交」とも呼ばれる。
こうして首相が高くうたういあげる「価値」は、実はいまの憲法が日本社会にもたらし、国民が戦後60年かけて培ってきたものにほかならない。そのことに安倍氏は気づいているのだろうか。
この「戦後」と、首相が脱却を言う「戦後レジーム」とはどこで重なり合うのだろうか。「精神的に占領を終わらせる」というけれど、終わった時、どんな展望が開け、社会がつくられていくのだろうか。戦前的な価値を重んじる社会にもどることにつながらないのか。
「戦後」に問題がなかったわけではないし、憲法に改めるべき点があってもおかしくはない。しかし、憲法がもたらした自由と民主主義の価値は、発展させるべきであっても、脱却するものでは決してない。
首相は雄弁に主張するものの、9条改正以外に、目指すべき方向はほとんど語ろうとしない。だが、改憲を言うのなら、まず「戦後」をきちっと語るのが先だろう。
それなしに新しい「美しい国」への誘う(いざなう)のは、国民を惑わすだけだ。
'07.5.2.朝日新聞