散歩道<1686>

                          経済気象台(148)・家計のリスク資産選好

 2月末以来の為替狂騒劇も、どうやら一段落した感がある。この騒動を治める役割をしたのが個人マネーによる円売りの外貨投資だ。これまでリスクをさえ、金融資産の過半を安全な予預金や保険で保有していた家計が近年、急速にリスク資産に目を向け始めた。この大きな流れがファンドによる急激な円買い戻しを飲み込んでしまい、結果として為替の安定に寄与したことになる。実際、家計のリスク資産へのシフトは目覚しい。日銀の部門別資金循環によると、家計の金融資産残高は、昨年末には1540兆円にたっした。5年前に比べて約160兆円増えたことになるのだが、増加分の大半が株や投資信託などのリスク商品となっている。例えば、5年前では金融資産全体に占める株と投信の割合は8.5%の117兆円にすぎなかったが、直近では16.2%の250兆円になっている。また為替リスクをもつ外貨商品で見ると、投資信託の運用内訳の44%が対外証券となっていることから、個人が投資経由で保有するが外債が約30兆円、この他外貨預金や直接的な外債投資が11兆円ほどあるので、家計全体では40兆円余りの外貨資産をもつようになったことになる。これから団塊の世代が退職金を手にし、その間低金利が続いていれば、一層のリスク資産シフトが予想される。それ自体は株価を下支えし、為替には円安材料となって自分の資産価値を高める役割を果たす面があるのだが、株にしても為替にしても本来は価格変動リスクの大きな商品で、相場は上がることがあれば下がることもある。家計のリスク資産選考が市場安定化に寄与したとしても、それは家計自らが将来の価格変動リスクを背負い込んだわけで、市場のリスクが家計に移転したに過ぎない。家計は自らそのリスクを認識するとともに、販売側は最大限の情報を提供する責務がある。

'07.4.6.朝日新聞