散歩道<1678>
異見新語・格差問題(3)・制度的不平等の是正 (1)〜(3)続く
社会的な国家 さて、18世紀半ばのルソーの時代には新語だった「社会的」という言葉は今日、例えばフランスの現憲法第1条の、フランスは「社会的な共和国」であるという規定に継承されている。「社会的な共和国」とは「福祉国家」のことである。
総じてヨーロッパでは、社会民主主義が一定の力を維持しているが、それは、このような意味での、「社会的なもの」を強く志向する政治的プログラムなのである。
社会党や民社党など、「社会的なもの」に帝位した日本の政党は、第2次大戦後から90年ごろまで、国会の議席数で言えば全体の約3割の勢力を有していたが、ベルリンの壁やソ蓮の解体とともに一気にその力を失った。
「格差是正」ということが、日本の政治でも言われるようになった。新自由主義の批判もなされている。しかし、そこでは批判や是正の対象が否定的に発見されているだけで、それらに代えて目指すべき理念を肯定的に表現する言葉がかけている。出発点は見えていても、目的地にはっきりした名前がないのだ。
その名前の一つとして私たちは「社会的」という言葉を、あらためて吟味しなおすべきではなかろうか。
'07.4.28.朝日新聞・東京大准教授・市野川 容孝氏