散歩道<1673>

                        文化・探求・
前に進まない時代(2)          (1)〜(3)続く
                             進む技術変わらぬ中身

  この夏に劇場公開されたチャン・ツィイン主演の中国映画「ジャスミンの花開く」も、時代の激動によっても変わらない人間模様の繰り返しを描く作品だった。1930年代から80年代の上海。3世代の母と娘の人生はいつも同じよう軌跡をたどる。「人の世は簡単には変わらない」。そんな一種の悟りは今の世界に共通した気分のようにも見える。過去を切断することで脚光を浴びてきた現代思想の世界も風向きが変わり始めている。フランスなどでは10年前あまり前から、高名な思想家の伝記や回想の出版が相次いでいる。斬新な理論があまり生まれなくなったといわれるが、先に進まない時代の姿だけは先取りしていたということか。「2001年宇宙旅」などで知られる作家のアーサー・C・クラークに、「幼年期の終り」(ハヤカワ文庫)という近未来小説がある。

'06.8.8.朝日新聞