散歩道<1642>
意見新語・選挙の焦点(1)・政治は「格差」を語れるか (1)〜(3)続く
漠然とした印象なのだが、格差問題がこれほど世をにぎわしている割に、どうも政治問題になりきっていないように思えてならない。明確な利害対立として、政治の場において焦点化していない気がするのである。現在、多くの人が日本社会において経済的・社会的な格差が拡大しつつあるのではないかと危惧(きぐ)している。もちろん、現実にどれだけ格差が拡大しているかという客観的な指標については、なお議論がある。
結集しない不満
だが、かって日本社会を支配した「一億総中流」の意識が崩れ、格差が拡大しつつあるという認識が広まっていることは否定しがたい。ところが、日々格差問題が語られているにも関わらず、これが本当に政治問題化するかは、今のところはっきりしない。「下流」という言葉を耳にすることが多いが、自分が「下流」に属すると考える人たちがはたして、格差の是正を主張したり、さらには、そのような格差を生み出しす社会の根本的不公正に対して一致団結して意義を申し立てたりするかどうかが、はっきりしないのである。富の配分の不公平や不公正は、伝統的には政治の最重要争点であったことをおもうと、これは奇妙な事態であると言わざるを得ない。
'07.4.7.朝日新聞・東京大学准教授・宇野 重規氏
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