散歩道<1643>

                  意見新語・
選挙の焦点(2)・政治は「格差」を語れるか               (1)〜(3)続く

  これまでのところ、格差問題について、経済学や社会学、あるいは教育学の焦点からの議論が活発であるのに対し、政治学の焦点からの議論がいま一つ不活発であることも、このことと無関係ではあるまい。おそらく、格差というものが、一体いかなる政治的な意味を持つのか、はっきりした見通しが立たないのである。格差問題がいかなる意味において社会の共通課題であるのか、説得力のある議論が出て来ていないのである。格差の問題を痛切に感じ、格差の広がりに対して不満を持つ人の数は少なくないはずであり、不満を持つ人々が結集すれば、一つの政治的な力となるであろう。しかしながら、不満を持つているという点では一致団結できても、何に不満を抱いているのか、どこにその原因があるのかを論じはじめると、たちまち団結は崩れてしまうのが現状である。というのも、かって不満が、階級意識とも結びつき、社会の中で一定の数を有し、はっきりとした輪郭を持つ社会集団とのかかわりを持つていたのに対し、現代の不満の特徴は,一人ひとり多様で、ますます個別化する傾向を持っているからである。同じく、自分が現在置かれた状況に対し不満をもっているとしても。その不満は、各個人のこれまでの人生、家族、周囲の環境などと不可分に結びついている。もちろん、そのような不満にも、客観的に見ればいくつかのパターンがあるのだが、少なくとも各個人にとってそのような不満はあくまで「自分」固有のものとして受け止められている。
 

'07.4.7.朝日新聞・東京大学准教授・宇野 重規氏