散歩道<1638>

                        経済気象台(140)・格差をどこまで許すのか

 国土交通省の発表によると、3大都市圏の公示地価は上昇に転じた半面、地方部では依然下落が継続しているらしい。経済回復が都市圏主導であり、地方経済にはまだ明るさが弱いという主張が地価の面でも裏付けられた形である。また同時に都市部と地方の格差拡大ということも示されており、これまでの公共事業の削減や地方財政の三位一体改革など政府が選択した政策が原因であることも明らかである。また「格差の何が悪いのか」と言い切った、世界でもまれな政治家である前首相以来の政策を反映したものであろう。確かに、格差は成長の結果であると同時に成長の要因でもある。中国を見ると地域間と階層間の所得格差がその高度成長のダイナミズムを生み出している面もある。また、80年代以降のアメリカをみても、格差拡大と経済成長が同時に進んでいる。人間*1にも地域にも能力や資源、そして努力にも格差があり、その結果にも格差が出るのは自然である。しかし中国でもアメリカでもその政治的指導者は「格差拡大は問題だ」と発言するとともに、その是正策を講じてきた。「結果平等は時代遅れ」と、格差是正の否定発言をする与野党政治家がいる日本はその意味で異質な国であろう。本質的な問題は結果としての格差をどこまで許容するのかという社会的合意の問題、哲学の問題である。この点での議論が日本では尽くされていない。義務教育費や福祉費用の切り捨てなどが粛々と進み、世界的にも優遇されている高所得者税制や世界的に低水準な最低賃金があたかも当然のことのように放置されていることに、むなしさを感じる。このような国では持てる人は当然の行動として貯蓄に励むことになる。備えあれば憂いなしだからだ。地方自治体は歳出削減と歳入拡大に励むだろう。その結果は経済の伸び悩みであり一層の格差の拡大である。

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