散歩道<1637>
経済気象台(139)・デフレ継続の中で金利上げ
日本経済の持続的回復に異論の余地は無い。今年度も2%の実質成長率が見通され、数年来の成長軌道に変化の見ざしは見えない。原材料、人件費の上昇がありながらも、売り上げ増に裏打ちされて全般的な企業業績の改善も力強く進んでいる。にもかかわらず、消費の伸びはまだ順調とは言えない。大定年時代がはじまり将来不安が完全には払拭(ふっしょく)できない団塊の世代の貯蓄マインドは低調なままである。企業の売り上げ増も結局は不安定な海外要因が牽引(けんいん)している。経済予測機関の今年度、来年度予測を見ると、依然としてデフレーターはマイナスで、名目成長率が実質成長率よりも小さい状態が続いている。名目成長率がマイナスの悪性デフレではないものの、つまりはデフレがいまだに続いているのである。どこまで国民が意識しているか知らないが、時間をかけてデフレギャップを解消するという政策が選択され、それがまだ継続中で、需要回復も供給過剰もまだ完全には達成されていないと理解できる。こんな中で日銀が金利をあげた。昨年7月のゼロ金利解除以来である。今回の金融政策決定会合で賛成8、反対1の圧倒的な大差で決められたわけだが、デフレギャップを解消の過程での利上げの理由が分からない。市場の動き、経済と物価の動きを常に先読みしながら、巧妙に金利をコントロールしていたグリンスパン前米FRB議長の決定は常に意外だったのだが、結局は理解できる選択であった。今回の日銀の決定もそうあって欲しいものである。先月利上げを見送ったとき、テレビのワイドショーで、「政治に屈した日銀」という基調でコメントするいわゆる専門家が多かった。確かに政治家の牽制(けんせい)はあったが、デフレだから上げるべきでなかっただけである。まさか、政治ならぬテレビに屈した利上げとならないことを祈る。
'07.3. 朝日新聞 