散歩道<1632>

           鶴見俊輔さんと語る(2)・心に届かぬ言葉横行    対談相手・詩人アーサー・ビナードさん       (1)〜(4)続く

             
「国益」は一部の人の利益のためにみんなをこき使う口実 (ビナード)  言葉への無理解が日本の政治にすごく影響している。(鶴見
 ビナード 英語には「フオグ・オブ・ウオー
(戦争の霧)」という表現があります。戦争になると双方がとんでもないことをするので、善意は霧に包まれて、外からはどっちもどっちにしか見えなくなる。この霧を権力者は巧みに利用します。ブッシュ政権は、大量にかもし出していますね。
 核兵器の恐ろしさも、大戦の霧の中ではあやふやにされた気がします。でも、原爆投下から9年後、戦争の霧がかかっていないときに、マグロ第五福竜丸が、ビギニ環礁での水爆実験で被爆して、核兵器がどういうものかが広く伝わった。乗組員は助けを求める無線を打たずに焼津まで帰ったが、軍事機密に触れた船にアメリカが気ついていたら撃沈したであろう。
鶴見
 国家のなし得る悪が、一度に100万人でも殺せる大変な規模になった。 国家の前にまず社会があると知った1人の金達寿
(作家、1919〜97)だ。10歳で日本に渡り、廃品回収業をし、発禁処分の本に出会ってそう学ぶ。彼は作品を日本語で書いたが、根本が違ってくるんだ。日本の朝鮮人社会からは、その人口に比べ驚くべき数の文学者が出てくる。日本国籍がある人間は正しい日本語を使える、なんてことはない。国家、社会、そのような言葉を日本で認められているように使うと、自分の場所が分からなくなる。
ビナード
 「美しい国」
鶴見
 あれはよい例でしょうね。
ビナード 脱字があって、正しくは「美しい属国」。
鶴見
 戦争をする相手に似てくる。日本に勝ったアメリカの方では、自分の国は特別の国、と頭に入った。


'07.1.30.朝日新聞・鶴見俊輔さんと語る・詩人アーサー・ビナードさん

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