散歩道<1623>
経済気象台(133)・株価暴落の深淵
上海発の世界波波及型の株価下落は経済グロバル化の闇の深淵を連想させるものがある。背景には世界的なマネーの過剰、それも実態経済が必要としているよりもはるかに大きな余資が、利益獲得というだけの動機で瞬刻瞬刻、対象を選択し、動き回っている実態がある。国境を越えて働くこの管理不能な圧倒的なマネーの力を、「市場原理」という名の下に放任しているリスクには改めて留意が必要だろう。人々に奉仕する政治や社会の働きは経済的な利害の尺度だけで律してよいことではない。どの社会や国にも伝承してきた国有の生活文化や価値観があり、それが人々の存在の根となっている。しかし、経済のグロバル化はこうした多様な価値を市場原理で平板化し経済活動を自立する価値の尺度を曖昧(あいまい)にしてゆく傾向がある。今回の暴落で浴びた冷水もグローバリズムという名の下に判断停止してきた根本の課題を改めて想起させるものだろう。その課題のために残された時間も多いわけではない。例えば中国の経済も、過大な投資でバブル化しつつある。水資源を始め、成長と環境インフラのギャップの拡大、中央と地方の格差や汚職の問題など、いづれ一斉に表面化する可能性をはらんでいる。経済成長を最優先したからこそできた中国経済の繁栄ではあるが、「何のための経済か」という原点へのフイードバックの発想や仕組みが欠けていることのリスクにはよく注目しておく必要があろう。以前とは異なり、そのリスクはマネーという要素で拡大され、世界経済に大きな影響を与える。これに対する有効な対策や価値の尺度はないのだろうか。米国ではアカデミ−賞でゴア元副大統領の環境問題への挑戦を描いた作品が入賞した。世界経済のありようを全体として見直すきっかけが広く求められつつある。
'07.3.6.朝日新聞