散歩道<1624>

                         経済気象台(134)・超低金利のつけ

 日銀の利上げに対しては批判の声も見られる。しかし、超低金利をいつまでも続けると、世界経済に大きな歪みをもたらす。一つは日本の低金利が。世界にインフレを輸出し、いずれそのインフレを輸入しなければならなくなることだ。利上げ後も依然として世界で突出した低金利であるために、日本の円で資金調達をし、これを金利の高い海外市場で運用する「円キャリー取引」が大きくなっている。いまや東欧からニュージランドまで、世界各地で円建ての貸し出しが高まり、ハンガリーやロシアのインフレ率は8%前後まで高まっている。世界のインフレは、いずれに日本にも輸入を通じて伝播する。中には住宅バブルをもたらしているケースも見られる。特に欧州の住宅価格が高騰している背景には、円資金の流入が少なからずかかわっているとされる。いま一つは円キャリー取引の拡大が、それだけ世界の金融為替市場を不安定化させることだ。これは円キャリー取引による運用先が、必ずしも実物経済だけではなく、世界の株や再建、不動産などに向かっている面も大きいためだ。これが膨張する中で、グリンスパン前FRB議長が、米国経済の先行きに不安を投げかける発言をした。これがきっかけとなり、ヘッジファンドなどが一斉に円キャリー取引を巻き戻しにかかった。その結果、為替市場で円が急騰しただけでなく、中国から欧州、米国と世界の株価を同時下落に巻き込み、ひいては日本の株価も大幅な調整を余儀なくされた。今般の経験は、円キャリー取引はいつか巻き戻しされる時が来るが、それが為替や世界の株式市場を揺さぶりかねないことを示すこととなった。それだけに、金融政策は国内の物価のみならず、グローバルな視点での対応が必要になる。同時に、円キャリー・マグマが破裂する前にガス抜きも必要になる。

'07.3.7.朝日新聞