散歩道<1618>

                私の視点・「からだ」考・自分自身との関係しろう(1)             (1)〜(2)続く

 子どもたちはいま、「デリート(消却)」ボタンひとつで消えるデジタル情報の仮想的世界で生活している。。子どもの悲惨な犯罪や死など様々な状況はこうした環境とは無縁ではないだろう。そして私が指摘したいのは「からだ」への無関心さが背景にあるのではないかということだ。スポーツを楽しむ人が減り、「体育」授業はタダ体を動かすだけになったことで存在意義をうしなっている。だからこそ「からだ」や運動の本質を理解する新しい体育がひつようなのだ。東京大では今年度、3千人の新入生対象の必修授業に、「体を使って自分を科学し理解する」五つの「共通基礎実習」を導入した。自分の応答対応を知ったり、自らの最大握力の20〜100%の5段階の「つもり」で握る実験をしたりする。「つもり」と「実際」とは異なることを知って欲しいからだ。
 臥位
(がい)、座位、立位の姿勢の変化の順に増加する心拍数、体から切り離されてもシャーレー上で拍動し続ける心筋細胞から体の自立性を学ぶ。自分の意図と異なる心の身体応答をする私たち人間の「生物」と「人間」の両側面について、実際に体を動かしながら学ぶ。そしてその自立的な生物の能力を引き出し、練習により「つもり」と実際を一致させ得るのは人間だけであることを理解する。つまり、人間だけが「からだ」に働きかけ、「からだ」を変えて行くことが出来るのだ。
 

'07.3.7.朝日新聞・東京大学(身体運動科学)跡見 順子(よりこ)さん 

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