散歩道<1572>

                  鶴見俊輔さんと語る・生き死に学びほぐす(1)・・・    対談相手医師・徳永進さん       (1)〜(5)続く

人間は死ぬときに、だれになるのか。さまざまな死と向き合う地域医療にとりくむ医師・徳永進をむかえ、哲学者の鶴見俊輔さんは、生き死にを「学びほぐす」ことの大切さを説いた。矛盾に満ちた人生の中から自分を救い出すことが出来るだろうか。

 しぐさで意思をつたえる。最後は言葉を超えるんだ。鶴見  「しょうがいと」と死と取引できる。あきらめる力が減っている。徳永
徳永
 医師になって32年。病院の勤務医をしていた時は年に40〜50人の患者さんを見送りした。19床の野の花診療所では1年間に100人ぐらいがなくなっている。死を覚悟した患者さん,死はあってはならぬ家族、安らかな死をと思う医師、看護し、そこでッコミュニケーションをどうするかというのは難しい問題です。
鶴見
 姉の鶴見和子
(社会学者)が7月になくなる前病室で「あなたは私を一生馬鹿にしていたでしょう」といったのには驚いた。和子は小学校から米プリンストン大学までトップで通した。劣等性の私は確かにそんな和子を軽蔑していた。劣等性がバカにするのはありふれた話だ。それにどう答えたらよかったのか。「いえ、そんなことはありません、尊敬しています」といえばよかったのかもしれない。しかし、うそになる。私は黙っていた。
徳永 亡くなる人へのはなむけも考えられるが。
鶴見 偽善者と悪人とどちらがいいか。私は悪人です。
徳永 私の父は大学の先生だったががんで寝たきりになったある日、「今日は死なんけどな、誰かそばにおってくれえ」といった。最後が近づいたとき、好きな酒を吸い飲みで飲ませると「うまい」といって夜中の2時に亡くなった。1人で死ぬのはつらいぞ。お前もこうなるのだぞと家族に教えてくれた。死ぬときは家族でなくても誰かがそばにいることが大切。「伝える」のではなく。「伝わる」ということがある。

'06.12.27朝日新聞・鶴見俊輔さん医師・徳永進さん 

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